熊野寮生、熊野へ行く。NF紀伊熊野ツアー


面子:杉山(S1)、大塚、西納(文責)


久しぶり、のツアーである。

11月23日。早朝。ツアーの準備をしていて眠れなかった僕が明け方のボックスに行くと、NF前夜祭で暴れまくった藪内さん、タスクさん、釜下さん、それに今回一緒にツアーに行く大塚さんが眠りこけていた。朝の5時になり、大塚さんを起こして二人で京都駅を目指す。大塚さんとの付き合いは長いが、実は今回が初ツアーである(ちなみに大塚さんとは同じ文学部に所属しているが、キャンパスの中で会ったことは一度もない。なぜだ)。近鉄を乗り継いで松坂へ向かい、そこからJR紀勢本線に乗り換える。伊勢地方はいわば「裏近畿」といった感じの土地で(三重出身の高山と岡田さんごめんね)、ホームに入って来た特急がディーゼルだったり、なぜ廃線にならないか不思議で仕方がない名松線の電車が運行していたりしてなかなか遠くに来た感があった。紀伊長島駅に着き、輪行解除して杉山さんを待つ。駅前では地元の神社の祭をやっていたが、踊っている人もやる気なさげで、見ている人もほとんどいないようなむなしいことこの上ない祭だった。杉山さんが合流し、同じく南紀に来ている山田(フレ)パーティーと合流するために国道42号を走り熊野市を目指す。天気はあまりよくない。久々の長いツアーなので、体がまだ慣れきっていず、海岸線の大したこともないアップダウンすらしんどく感じられる。尾鷲に着いた頃には雨も本降りになってきていた。尾鷲からは国道42号は山道に入り、峠を越えて再び海に出て熊野市を結ぶ。日も暮れかかった熊野市駅に行くと山田一行はもう到着していた。関根さん、中嶋さんと山田を加えた6人で買い出しを済ませ、銭湯に入る。熊野の町は本当に人の気配がないゴーストタウンのようだった。銭湯の電気風呂は少し強めで、関根さんがケイレンを起こしながら入っていた。銭湯から上がってきて、「あれ、フレディは?」・・・ 山田、銭湯を前にして行方不明に。班走行の途中でちぎれたらしい。仕方なく5人は先にテン場のパーキングエリアへ行き、調理をしながら山田を待つ。テン場はトイレと水こそあるものの、雨をしのげるのは売店の狭い軒下だけという有様。中嶋カレーおじさんの指導の元、ジャワカレー中辛とこくまろのブレンドカレーを作る。買い出しで暴れ過ぎてウインナー2袋余る。明日の夕食のために運ぶことに。杉山さん「あれ、ビール足りねーな。」さっきまでは寒さでうち震えていてビールなんて1缶ずつでいいやと思っていたが、銭湯に入りカレーを食べてやはり欲しくなる酒はビール。それでも風が強くとても寒い。コッヘルの中のカレーもみるみる冷めていく。僕はアテの餃子や肉を食べることもなく早々に寝ることにし、残りの5人はトイレの中で濃い酒を飲む。シュラフを濡らしてしまい寒くて眠れないのではないかと心配だったが、冬用シュラフだったので思いの外快適に眠れた。


11月24日。朝は苦手だ。なかなか起きられない。どうにかこうにかシュラフから這い出し、昨日のカレーの残りで作ったカレー汁とご飯を食べる。写真を撮りに来たおじさんが話しかけてきた。大阪で働いて定年退職したあとにこっちに移り住んで、風景写真を撮ったり釣りをしたりして悠々自適な生活をしているそう。途中までの行程は山田パーティーと一緒なので6人揃って出発。県道34号を通ってトンネルの旧道へ。杉山さんの予想通り、峠の手前、山が開けたところから熊野灘と熊野市の町並みが見えた。峠のトンネルを抜け七色ダムの方へダウン。道にはびっしりと落ち葉がつもっていて、スリップしないように慎重に下る。七色ダムの堰の上を通り、国道に沿って流れる瀞峡を走る。七色ダムとその上流にある池原ダムはバス釣りで有名で、小中高と釣りにいそしんでいた僕にとっては憧れの地だった。そのころに買っていたバス釣り雑誌でもよく特集が組まれていて、池原の60センチバスといえば当時の釣り少年の憧れの的だった。ふと、朝話しかけてきたおじさんのように、退職したあとはこの地に住んで毎日海釣りやバス釣りに没頭する生活もいいなと考える。大学時代も「熊野」寮に住み、退職したあともこの熊野の地に住む、そんな「熊野」から離れられない人生を夢想して、少し愉快な気持ちになった。道の駅おくとろでしばし休憩。ジャンは山田が負ける。熊野の特産品である柑橘類の「じゃばら」のジュースを堪能。ここからは二つに分かれて移動。僕ら3人は細い吊り橋を渡り、白い道に入ってマップルおすすめの丸山千枚田を目指す。途中、丸山の集落に入る手前の分岐で謎の選挙ポスターを発見。熊野市市議会補欠選挙のポスターらしいが、2枚のうち、一枚は大きな字で「川村」と書いてあるだけのもの。候補者の顔写真もスローガンもない。もう一枚も「今西○○」(下の名前は忘れた)と書いてあるだけで、かろうじて「川村」と違ってフルネームで書いてあるだけだった。棚田のど真ん中にある東屋で昼食。ミカンの無人販売があったので一袋買って3人で食べる。天気は回復し、日差しが心地よい。まさに「棚田の中心で昼飯を食う」といった感じである。と、突然棚田の下の方から選挙カーが上ってくる。何と例の今西さんである。爆笑する僕たちを横目に、あのやる気のないポスターを貼ったワゴンに乗った今西さんとその支援者たちが手を振りながら通り過ぎていった。

 県道780号に入り、旧熊野川町へ。途中にAコープがあったが、テン場の道の駅奥熊野古道ほんぐうの正面にもAコープがあるということで、電話番号だけ聞いて閉店時間を確かめ、結局買い出しはしなかった。そのまま国道168号を走って川湯温泉の仙人風呂へ。河原にチャリを止めると風呂から上がったおばさんが話しかけてきた。ここの管理人かと思ったが、近くに住んでいる人らしい。タオルないならあげるよと3枚もタオルをくれ、しかもなぜかマシュマロまでくれた。杉山さん曰く「マシュマロは不思議ちゃんの食べ物だ」そうで。ここは河原の中に温泉がわき出していて、寒い時期になるとショベルカーで河原を掘り起こして即席の大露天風呂を作るのだ。当然脱衣場も外にあって、男性用は竹の垣根を立てて道路から見えないようだけなっている。服を脱いで腰にタオルだけ巻いて入浴。連休中ということもあり、風呂には30人ぐらいの人が入っていた。飲食物持ち込み禁止だったので、残念ながら風呂につかりながらの冷たいビールという理想は実現できなかった。お湯が少しぬるいなと感じたら、底の砂利を少し掘れば熱い湯が沸き出してくる。しかも湯が沸き出してくる場所はまちまちで少しずつ移動しているようで、3人で熱いぬるい言いながら露天風呂を堪能。大塚さんと杉山さんは風呂の流れ出し口、つまりは風呂と川との境目のところで乱闘。二人川に投げ入れあっていた。そんなこんなで結局一時間近く入っていた。風呂から上がり道の駅を目指す。スーパーに着くと車に乗った人が話しかけてきた。この近くに住んでいるそうで、もしよかったら泊めてくれるそう。しかし、あとから来る山田パーティーのことを考えて、丁重にお断りした。スーパーで買い出しを済ませ、先に3人で食前酒を飲む。昨日の失敗を教訓にビールは多めに買っておいた。杉山さんがお目当てにしていた「大ロシア」(ヤマザキパンの「ロシア」パンの超巨大なやつ。以前にここのスーパーで買い出ししたときはあったらしい)は今回はおいてなかったようだ。山田パーティーがやってきて、昨日と同様6人で調理開始。道の駅には「野宿禁止」の張り紙が貼ってあったし、風も強かったのでレストランの建物の裏でカレーを作る。本格的にETC(=エブリディ・当然・カレー)発動である。中村が今夜合流することになっていたが、きっと来ないだろうという結論に全会一致で至り残さず食べる。カレーを作り、ビールを飲み、いい気分になったところで満天の星空の下マットを広げシュラフにくるまって眠る。これぞツアーの醍醐味。


11月25日。天気は曇り。朝5時ぐらいにレストランの従業員の人が来て建物の中の掃除を始める。野宿禁止の張り紙があったので注意されるのではないかと思ったが、管理人らしきおじさんが注意するどころか逆に熱いお茶を入れてもてなしてくれた。人の優しさが身にしみる。今日は週末と言うことで道の駅では朝市をやっていた。熊野名物めはりずし(高菜の漬け物のじくを刻んで混ぜたご飯を高菜の葉で巻いたおにぎり。4個で300円だった。とてもおいしいので南紀にいった時には是非ご賞味あれ)を買い、ジャンをして山田パーティーに別れを告げる。国道168号を走り、奈良県の5分の1、面積日本一の村十津川村へ。国道425を少し走って川津今西林道に入る。久々のツアーに舗装とはいえ本格林道のきついアップは体にこたえる。大塚さんと二人で成田の(あるいはある種の漫画やアニメに出てくる少女たちの)真似をしながら「はうぅ」とか「あうぅ」とか言いつつアップする。標高が高くなるにつれ、紅葉で美しく染まった南紀の山々が広がった。林道を上りきったところでダートに入る。最初のうちは道もわりときれいで進みやすかったが、次第にアップダウンがきつくなり路面も荒れてきた。途中で昼食を取り、止まっていると寒いので休憩も短めでどんどん進む。観光施設か何かの音楽が聞こえ、やっとのところで護摩壇山に近づいたと思ったら、僕は一人道に迷ってしまった。道を間違ったと思い、来た道を引き返し、別の道へ行くとそこは行き止まり。やはり最初に進んだ道が正しかったのだ。来た道を戻り、さっき引き返したところをさらに先に進むと、地図を示した看板が現れた。思わず全身の力が抜けるほどほっとした。そこから先はまだかまだかと思いながらダウンし、やっとのことでダートを抜け高野龍神スカイラインに出る。杉山さんと大塚さんがラーメンを作って待っていてくれた。本当にありがたかった。隣の売店でお土産の飴を買う。一つは寮の仲間に、もうひとつはうちの部が日頃迷惑をかけっぱなしのお隣さんの陶芸部にいる知り合いに。高野龍神スカイラインをダウンし、全舗装の湯川笹の茶屋林道を抜けて県道に入り旧花園村へ。ここは一回生の回生ツアーで一日目にテン場った村である。買い出しも風呂もテン場もそのときと同じところで。今夜は中嶋先生もいないのでキムチ鍋にした。雨が降りそうだったので、トイレから少し離れた屋根のあるテニスコートで就寝。


11月26日。いよいよ最終日。昨日の疲れから3人揃って二度寝。一番最後まで寝ていたのは当然僕でした。国道480号を走り、途中の白い道を通って花園美里(今思ったが少女漫画に出てくる女の子のような名前である)トンネルの旧道にある地蔵峠を目指す。途中、僕のマウンテンのリアディレーラーのワイヤーが切れてしまい、変速不可能に。応急処置でギアを中段に固定して上るが、フロントディレーラーも実質センターとインナーしか使えない状態だったので登り返しのダウンは歯がゆいことこの上ない。やっとのことで峠に着き、国道370号の緩やかなアップを登り、最後の峠手前の登りは延々ダンシングしながらやっとのことで到着。あとは橋本までダウンして、南海電鉄で輪行して京阪で京都に帰ってきた。出町柳で輪行解除し、3人で一目散にさとのやへ向かう。肉をむさぼり食い、飯をかき込み、ビールを胃に流し込む。ツアーの終わりはやっぱり肉に限ると思った。


感想。南紀はこれが4回目になるが、本当に南紀の魅力に触れることができたのは今回が初めてだと思った。杉山さんに至ってはもうかれこれ十数回も来ているのもうなずける。今回のツアーで3人で一致したことだが、南紀は京都の北山を大きくしたような感じがある。山はわりと険しいが、意外と道が多くあり、面白いダートもたくさんある。それに、高野山や吉野、熊野古道のように古くからの歴史ある森だという点も京都の北山に似ていると思う。これからしばらくは南紀の魅力にとりつかれっぱなしになる気がする。

 楽しかったなあ。                      

(おわり)

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