海越しに立山連峰を望む

海越しに立山連峰を望む





by岩木










NFは実家でピアノの練習に励むことにした。125日にはサークルでやってるピアノの定期演奏会があるからだ。





しかしながら、どういうわけか実家にチャリを連れて帰ってしまった。これがすべてのはじまりだった。










1125日、富山県の空は雲ひとつない青空だった。朝のニュースでも、「行楽日和となるでしょう」と言っている。一応説明しておくと、富山県で空一面が青くなるのは年に10回ちょっとなのだ。つまり、この日家に引きこもるという行為は一年の十何分の一かを無駄にしたことになる。さすがにピアノの練習も大事だが、これには代えていられないと思い、どこか行こうと決意。





さて、どこにしよう・・・立山周辺?、、あーめんどい、、、、あ~どーしよ、、、、牛岳・夢の平?、、この前そこそこ晴れた時に行ったしなー、、、、あーどーしよ、、、、牛岳山頂?んー標高987mとか激しく萎えるわーー、うぉー、、あーーどーしよ、、、





御前山?んーせっかく綺麗な立山があまり見えないしなー、、うぉーどーしよ、、、あー・・・・





ってことでお昼になった。某N君のことを言ってられないくらいアホをこいてしまった。いい加減に悩むのをやめて、とりあえず家を出て、県営渡船場にいって港の対岸に渡ることにした。船の上でようやく案が浮かんだ。「そうだ!海越しの立山だ!」










話が決まればあとは早い。とりあえず雨晴(あまはらし)海岸というところに行った。距離にして家から30分もかからないところだ。





雨晴海岸にはいくつも展望スポットらしきものがあるようだ。もっとも有名なのは、「義経岩」というところから見た「女岩と立山連峰」。銀盤酒造のCMにも使われていた気がする。世界的にも珍しい風景らしい。でも、ここじゃなくても、海岸沿いを走っている限り海越しの立山は十分に満喫できると思う。










氷見まではひたすら海沿いの旧国道などを走った。カメラは一応持っていったものの、どうやらおれはカメラの性能を信じていないのか、わざわざ止まって撮るということができないようだ。というよりは、動きながら景色を感じることが好きなようだ。止まって写真を撮るとどうもストレスがたまる。










氷見の市街地を抜けたがまだ家を出てから1時間ほどしかたっていない。さすがにこれだけで帰るのはもったいないと思い、氷見の山奥を目指すことにした。この後、氷見市というとたいていは(富山県民でも)「海」というイメージがあったのが、大きく覆されることになった。










立山の展望がききそうな場所をマップルで探すと、候補は2つあった。碁石ヶ峰と、石動(いするぎ)山だ。自分の萎えの度合いから判断して、近いほうの碁石ヶ峰に行くことにした。氷見の海岸から内陸に向かって30kmくらい、標高差は460m程度。1時間半で着くだろうと思っていた。





最初の20km弱はひたすらフラットか微アップで、45分くらいでいけてしまった。ところが、問題はここからだった。これまででほとんどアップをしていないということは、残り10kmくらいで400up以上することになる。走っていくと案の定現れた「10%」の標識。さらにびっくりしたのはその上にある集落。結構大きな集落がこんな坂の上にあるなんて!冬とか買い物で町に下りるのも大変そうだなと感じた。さらにいくとまた「7%」とか「8%」とか。運動不足の足には結構堪えた。





ここまで不思議だなーと思っていたことがあった。それは、3桁県道のくせにこれほど山奥でも2車線が確保され続けているということである。車もそこまで通るわけじゃないし、なぜだと疑問に思っていた。と、その答えは現れた。アップし続けた末に現れた「懸礼」という集落。なんじゃここは!冬場はどうやって暮らしているのかマジわけわからんかった。





この集落を抜けてしばらく行くと石川県に入った。鹿島少年自然の家を目印に下り、碁石ヶ峰に向けて再び上り返す。こっちもなかなかの激坂。10%以上ありそう。碁石ヶ峰の北側の駐車場は人も少ないし山頂まで距離もありそうだったのでスルー。東側斜面を通って南側の駐車場まで行った。ここは車いっぱい。山頂までは残り30m(階段)。サイクリング部らしくここは山頂までチャリを持っていった。最後の10mまでは余裕で乗れるくらい傾斜もゆるい。





ということで、山頂到着。まずは「うゎぁぁぁああああ~~~~」とひっそり感動。少しかすんでいるが立山連峰が海越しに見えた。海から30kmほど離れているのに。そして、羽咋市の側もまた、森林の先に海が見えた。南には白山もうっすらと見えて、まさに「360度の大展望」だった。





カメラは相変わらずへぼいが、とりあえず写真をとりまくり、脳裏に景色を焼き付けて1時間くらい山頂でのんびりした。





一人になるまで山頂にいたかったが、カメラおやじがなかなか帰らず、あきらめて下山した。帰りは道なりに下ったら羽咋市に出てしまい、再びかるい峠越えをして富山県に入った。家まで50km。半分以上ナイトランだったが、無事にたどり着き、家ではピアノの練習に励んだ。まともに練習にはならなかったが…。